たまたま本屋で見かけた絵本、気になったので読んでみました。
『よいことと わるいことって、なに?』文:オスカー・ブルニフィエ(訳:西宮かおり) 絵:クレマン・ドゥボー
疑問と答えで哲学する
表紙に「こども哲学」と書いてある通り、絵本を通して子どもに哲学と教えるシリーズのようです。
とてもかわいい絵柄ですが、内容的には「おなかがへったらどろぼうしてもいいとおもう?」「どんなときにもおやのいうことをきかなきゃだめ?」など、子どもが素朴に疑問に思いそうなこと、でも、親もなかなか返答に窮してしまいそうな事柄について書かれています。
それぞれの疑問について、断定的な回答をするのではなく、回答をいくつか示し、それぞれに「そうだね、でも…」と、実はそうじゃないんじゃないかと考えるヒントが挙げられています。
更なる疑問で哲学する
例えば、「おなかがへったらどろぼうしてもいいとおもう?」に「だめ、どろぼうはわることだから」と、一般的に親が言いそうな回答をした後に、「そうだね…でも、それがわることだって、だれが言ったの?」「そうだね…でも、生きているあいだじゅう、いいことばっかりしてられる?」など疑問を投げかけます。
その後、「だめだよ、ひとのものをとっちゃいけないんだ。」と答えた後、「そうだね…でも、おなかがぺこぺこで死にそうだったとしても?」と、さらに疑問を投げかけています。
このように、回答と、それに対する疑問が続いており、続けて読んでいくとこの絵本の題名の通り「よいことと わるいことって、なに?」ということについて、考えてしまいます。
まさに、この絵本が子供たちに対して、また、子どもたちを教育する大人たちに対して問いかけていることだと思います。
結論から哲学する
この回答と疑問をなんどか繰り返した後、著者自身の解説が入ります。これも断定的なものではなく、これまでの回答と疑問をまとめて、さらに考えさせられる内容になっています。
そのあとに、「この問いについて考えることは、つまり…」と「おなかがへったらどろぼうしてもいいとおもう?」という問いについて考えることの意味を、例えば「…法律やルールが、世の中でどんな役にたっているのか、考えてみること。」など、何点かポイントを挙げ、その章を終わらせています。
このように、最初から最後まで、断定的な答えや常識的な考えを押し付けるのではなく、ひとつひとつの問題に深く考えさせるような構成になっています。
かわいい絵柄の絵本を見ながら、子どもとともに哲学的な問題について考えることのできる、とても素晴らしい絵本だと思います。
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